TS-BASE 物流
2024.07.23
3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とは?利用するメリット・デメリットや業者の選び方、導入の手順
3PL(サードパーティ・ロジスティクス)は、物流業務を外部の専門業者に委託することで、コスト削減や業務効率化を図る手段です。
本記事では、3PLの基本的な概念から、利用するメリット・デメリット、業者の選び方、導入の手順まで、詳しく解説します。物流の最適化を目指す企業にとって3PLの導入はどのような効果をもたらすのか見ていきましょう。
目次
3PL(サードパーティ・ロジスティクス)とは?
3PLは、企業の物流業務を第三者の物流業者(サードパーティ)に外部委託することです。これにより企業は自社のコア業務に集中でき、物流に関する専門知識やリソースを持つ業者のサポートを受けることが可能になります。
3PLの種類
3PLには、アセット型3PLとノンアセット型3PLという2つの主要な種類があります。それぞれの特徴を説明します。
アセット型3PL
アセット型3PLは自社で物流施設や輸送車両などの資産(アセット)を保有している物流業者です。
特徴
- 施設と設備の所有:倉庫、配送センター、トラックなどの物流インフラを自社で所有しています。
- 一貫したサービス提供:自社設備を活用することで、一貫した品質の物流サービスを提供できます。
- 高い価値の提供:大規模な設備を持つことで、コストの効率化を図りやすく、顧客に競争力のある価格を提供できます。
メリット
- 安定性と信頼性:自社で保有している資産を使用するため、サービスの安定性が高く、信頼性が確保されやすいです。
- 迅速な対応:自社資産を活用することで、迅速な対応が可能です。
- 長期的なコスト削減:初期投資は高いものの、長期的にはコスト削減が見込まれます。
デメリット
- 初期投資の高さ:設備を所有する分、費用も高めに設定されており、大きな初期投資が必要です。
ノンアセット型3PL
ノンアセット型3PLは自社で物流施設や輸送車両などの資産を保有せず、外部のパートナーやサプライヤーと連携してサービスを提供する物流業者です。
特徴
- 設備の非保有:倉庫やトラックなどの物流インフラを持たず、外部のリソースを利用します。
- 柔軟な対応:外部パートナーとの連携により、業務量の変動や顧客のニーズに対して柔軟に対応できます。
- コスト効率:自社で資産を保有しない分、アセット型に比べて利用にかかる費用を抑えられます。
メリット
- 高い柔軟性:外部リソースを利用することで、需要の変動に対して迅速に対応できます。
- 低い初期投資:資産を保有しないため、初期投資が少なくて済みます。
- 幅広いサービス提供:多様なパートナーとの連携により、幅広いサービスを提供できます。
デメリット
- 品質管理の難しさ:外部業者に依存するため、サービス品質の管理が難しくなる場合があります。
- コミュニケーションの課題:複数の外部パートナーとの適切なコミュニケーションが必要になるため、連絡に時間がかかることがあります。
- リスク管理の必要性:データセキュリティや契約管理など、リスク管理が重要になります。
3PLと2PL、4PLの違い
3PL以外に2PL(セカンドパーティ・ロジスティクス)、4PL(フォースパーティ・ロジスティクス)という概念があり、それぞれ異なる物流サービスの形態を指します。以下にそれぞれの定義と違いをまとめました。
3PL(サードパーティ・ロジスティクス)
3PLは企業の物流業務全般を包括的に管理・運営するサービスプロバイダーです。輸送や保管だけでなく、在庫管理、受発注管理、物流戦略の立案など、幅広いサービスを提供します。
特徴
- 包括的なサービス提供:輸送、倉庫管理、在庫管理など、多岐にわたる物流業務をカバーします。
- 物流管理の専門性:専門的な知識と技術を活用して、効率的な物流運営を実現します。
2PL(セカンドパーティ・ロジスティクス)
2PLは主に輸送や倉庫保管など、基本的な物流サービスを提供する業者です。自社でトラックや倉庫などの設備を持ち、荷主企業に対して輸送や保管サービスを提供します。
特徴
- 自社資産の利用:トラックや倉庫を自社で所有し、運営しています。
- 限定的なサービス:基本的な輸送や倉庫保管に特化しており、他の物流機能は提供しない場合が多いです。
- 運用の独立性:荷主企業の物流活動に対して、独立してサービスを提供します。
- パートナーシップ:荷主企業と緊密な連携を図り、カスタマイズされたサービスを提供します。
4PL(フォースパーティ・ロジスティクス)
4PLは物流業務の全体を統括する統合サービスプロバイダーです。3PLを含む複数の物流業者を管理し、最適な物流戦略を構築・実行します。
特徴
- 統合管理:3PLを含む複数の物流サービスプロバイダーを統合的に管理し、効率的な物流ネットワークを構築します。
- 戦略的パートナー:荷主企業の物流戦略の立案から実行までをサポートし、物流全体の最適化を図ります。
- 高度なサプライチェーン管理:サプライチェーン全体の視点から物流を管理し、効率化とコスト削減を追求します。
3PLと従来の物流代行の違い
3PLと従来の物流代行の違いについても紹介します。
3PLは保管、ピッキング、パッキング、輸送、在庫管理などを全て統括して行い、業者は顧客企業と長期的なパートナーシップを築きながら顧客の成長や変化に応じてサービスを柔軟に調整します。さらに、高度なITシステムを駆使することで、物流プロセスの効率化と可視化を実現します。これにより、企業は物流業務を一元管理でき、業務効率の向上やコスト削減が期待できます。
一方、従来の物流代行は特定の物流業務を一時的に代行するサービスでした。例えば、輸送や配送など特定の部分のみを担当します。これらのサービスは、一時的なニーズに応じて短期的な契約が多く、必要な時に必要な分だけ利用することが一般的です。ITシステムの活用は3PLほど高度ではなく、基本的なシステムを使用することが多いです。従来の物流代行は、特定の業務を効率的に外部に委託することで、企業の負担を軽減するのに役立ちます。
3PLの機能
3PLはどのような機能を持っているのか紹介します。ここで紹介するのは一つの例であり、利用する3PL業者によって提供されるサービス内容も異なるため、あらかじめご認識ください。
輸送管理:3PL業者は貨物の輸送手配を行います。陸上、海上、航空輸送が含まれ、最適な輸送手段を選択してコストや時間の効率を最大化します。
倉庫管理:3PL業者は倉庫スペースの提供と在庫の管理にも対応します。商品の受け入れ、保管、出荷のためのピッキング、梱包が含まれ、在庫の追跡と管理をリアルタイムで行います。
倉庫管理については、こちらの記事で解説しています。
在庫管理:在庫の最適化と在庫レベルの維持を行い、過剰在庫や欠品を防ぎます。これには、自動補充システムの使用や在庫回転率のモニタリングが含まれます。
在庫管理についてはこちらの記事で解説しています。
受発注管理:受発注プロセスの管理を行い、注文の処理、発送、納品までを一貫してサポートします。これにより顧客満足度を高めることが可能です。
受発注管理については、こちらの記事で解説しています。
逆物流(リバースロジスティクス):返品や修理が必要な商品の取り扱いを行います。これには商品の回収、検査、修理、再販、廃棄が含まれます。
カスタムソリューション:企業の特定のニーズに応じたソリューションを提供します。例えば特別な取り扱いが必要な商品の取り扱い、特定の市場への対応などがあります。
ITシステムの導入・運用:物流管理システム、輸送管理システム、ERPシステムなどのITシステムを導入し、データの可視化とリアルタイムの情報提供を行います。
コンサルティングサービス:物流の効率化やコスト削減のためのコンサルティングサービスを提供します。これには物流ネットワークの最適化、プロセスの改善提案などが含まれます。
カスタマーサービス:顧客からの問い合わせ対応やトラブルシューティングを行い、顧客満足度を向上させます。
3PLを利用するメリット
3PL業者を利用することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なものを挙げていきます。
物流コスト削減
3PL業者を利用することで、物流業務に関連するコストを大幅に削減できます。例えば、専用の倉庫や輸送機器を保有せずに済むため固定資産の投資が不要となり、運営コストが抑えられるでしょう。
業務効率化
3PL業者は物流業務の専門家であり、最適な運営方法や最新の技術を活用して業務を効率化します。これにより、受発注処理、在庫管理、配送などのプロセスがスムーズに行われ、生産性の向上が期待できるでしょう。
また企業は物流業務を3PL業者に委託することで、コア業務(製品開発、マーケティング、販売など)に専念できます。
高い柔軟性の確保
3PL業者を利用することで、業務量の変動に柔軟に対応できます。需要が急増した場合でも、3PL業者は迅速に対応できるため、ビジネスチャンスを逃さずに済むでしょう。
また事業の拡大や縮小にも柔軟に対応できるため、企業の成長に合わせた運営が可能です。
専門知識と経験の活用
3PL業者は物流業務に特化した専門知識と豊富な経験を持っています。そのため、最新の物流技術やベストプラクティスを導入することで、サービスの質を向上させることが可能です。
リスク分散
物流業務に関連するリスク(輸送中の事故、在庫の紛失、自然災害など)を3PL業者に分散することで、企業のリスクを軽減できます。また3PL業者はリスク管理のプロであり、適切な対策を講じることができます。
最新技術の導入
3PL業者は最新の物流技術やシステムを導入しているため、企業はその恩恵を受けることができます。これにはリアルタイムの在庫管理システム、トラッキング技術、ビッグデータ解析などが含まれます。
3PL業者を利用するデメリット
3PL業者を利用することには多くのメリットがありますが、場合によっては利用がデメリットを招くことも。ここでは考えられるデメリットの例を紹介します。
コントロールの喪失
3PL業者に物流業務を委託すると、企業はその業務に対する直接的なコントロールを失うことになります。業者の運営方法や意思決定に依存するため、自社の期待や基準が必ずしも満たされるとは限りません。
コミュニケーションの課題
外部業者との間でスムーズにコミュニケーションをとることが難しい場合があります。異なる企業文化や業務プロセスが影響し、情報の共有や迅速な対応が遅れることなどがあるかもしれません。これにより、業務の遅延やミスが発生するリスクが増える可能性があります。
品質管理の問題
外部業者が提供するサービスの品質を管理・監督する必要があります。自社基準を徹底するためには、継続的なモニタリングとフィードバックが必要となり、それに伴う管理コストが発生するでしょう。
データセキュリティのリスク
物流業務には顧客情報など多くの機密情報が含まれるため、3PL業者に委託することでデータセキュリティのリスクが増加します。情報漏洩や不正アクセスのリスクを防ぐためには、厳格なセキュリティ対策が必要です。
隠れたコストの存在
3PL業者を利用することで一見するとコスト削減が実現できるように見えますが、隠れたコストが発生する可能性があります。例えば契約外の追加費用、トラブル対応費用、管理コストなどが挙げられます。事前に確認が必要です
移行期間の必要性
3PL業者を利用する際には、業務の移行期間が必要です。新しいシステムやプロセスに適応するための時間やトレーニングが必要となり、その間の業務効率が一時的に低下する可能性があります。
信頼性の問題
信頼性が低い3PL業者を利用すると、業務の遅延や品質低下が発生するリスクが高まります。特に、新しい業者や経験の浅い業者との取引では、信頼性の確認が重要です。
3PL業者の選び方
3PLを導入し、最大限に効果を発揮するためには信頼できる業者を選ぶことが重要です。また提供されるサービスが自社のニーズとマッチしていることなども重要になります。
ここでは3PL業者を選ぶ際のポイントを紹介します。
信頼性と実績
信頼性と実績は最も重要な選定基準です。業者の過去の実績や評判を確認し、信頼できるパートナーかどうかを評価します。具体的には、業者の顧客レビュー、業界での認知度、契約期間中のトラブルの有無などを調査しましょう。
業務範囲と専門性
業者が提供するサービスが自社のニーズに合致しているかを確認します。例えば、倉庫管理、輸送、配送などの具体的な業務範囲や業者の専門性が、自社の業務要件と一致しているかを確認することが重要です。
技術力とシステムの整備
最新の物流管理システムやトラッキング技術を利用しているかを確認します。最新の技術を活用している3PL業者を選ぶことは業務の効率化に大きく影響するでしょう。
費用と契約条件
サービスの費用対効果を評価し、隠れた費用や追加料金がないかを確認します。また契約条件についても詳細に確認し、長期契約や解約条件などについて十分に理解することが重要です。
柔軟性と拡張性
業者がビジネスの成長や需要の変動に対して柔軟に対応できるかを確認します。季節変動や突発的な需要増加に対応できる拡張性があるかどうかも評価すべきポイントです。
サポート体制とコミュニケーション
業者のサポート体制が整っているか、迅速かつ適切な対応が期待できるかを確認します。また適切なコミュニケーションチャネルが確保されているか、情報共有やフィードバックが円滑に行われるかも重要なポイントです。
データセキュリティとコンプライアンス
機密情報の取り扱いやデータセキュリティに関する対策が適切に行われているかを確認します。業界の規制や法令に準拠しているか、コンプライアンス面でも問題がないかを確認することが重要です。
地理的なカバー範囲
地理的に自社の物流ニーズに対応できるかを確認します。例えば、国内外の配送ネットワークが充実しているか、ターゲット市場に対応できるかなどを評価します。
継続的な改善の姿勢
業者が継続的な改善や技術革新に積極的であるかを確認します。定期的なパフォーマンスレビューや改善提案を行い、業務効率を向上させる姿勢がある業者を選ぶことで、さらなる業務効率化につながるでしょう。
3PL導入の基本的な手順
実際に3PLを導入する場合、どのような手順で行えばいいのでしょうか。基本的な流れを紹介します。
- 目的と目標の設定:まず3PLを導入する目的や期待する成果を明確にします。例えば、物流コストの削減、配送の迅速化、在庫管理の効率化など、具体的な目標を設定してください。
- 現状分析:自社の現行の物流プロセスを詳細に分析し、改善が必要なポイントや問題点を洗い出します。物流コスト、リードタイム、在庫管理の精度、配送品質などのデータを収集し、現状を把握しましょう。
- 要件定義:3PL業者に求める具体的な要件を定義します。サービスの範囲、対応エリア、技術要件、品質基準など、詳細な要件をリストアップします。
- 3PL業者の選定:複数の3PL業者をリストアップし、それぞれの業者のサービス内容、実績、評判を比較します。最終的に、自社の要件に最も適した業者を選定しましょう。
- 契約の締結:選定した3PL業者と契約条件を交渉し、合意に至ったら契約を締結します。契約内容の際には、サービス範囲、料金体系、パフォーマンス基準、契約期間、解約条件などを確認してください。
- プロジェクト計画の策定:3PL導入に向けた詳細なプロジェクト計画を策定します。導入スケジュール、役割分担、移行手順、必要なリソースなどを明確にし、計画を実行しましょう。
- システムとプロセスの統合:3PL業者のシステムと自社のシステムを統合し、データの連携や業務プロセスの整合性を確保します。また必要に応じて、システムのカスタマイズやインターフェースの開発を行います。
- 担当者のトレーニング:自社のスタッフと3PL業者の担当者に対して、導入するシステムや新しい業務プロセスのトレーニングを実施します。
- 運用開始と監視:3PL業務の運用を開始し、業務が円滑に進むかどうかを監視します。初期段階で発生する可能性のある問題に迅速に対応し、業務が安定するまで担当者をサポートしましょう。
- パフォーマンスの評価と改善:3PL業者のパフォーマンスを定期的に評価し、契約に定めた基準に基づいて業務の品質や効率を確認しましょう。必要に応じて改善提案を行い、継続的な業務改善を図ります。
3PL導入を検討してみよう
3PLは、物流業務を専門業者に委託することで、企業の競争力を高める効果的な手段です。適切な業者を選び、計画的に導入することで、コスト削減や業務効率化を実現できるでしょう。
物流の最適化に悩んでいる企業は、本記事で紹介したポイントを参考に、3PLの導入を検討してみてください。
-
TS-BASE編集部さん
TS-BASEシリーズの促進を目指し活動しています。
導入をご検討の方は
こちらから
-
サービスの紹介資料や
お役立ち資料は
こちらから -
導入のご検討やその他ご相談は
こちらから